【吉祥寺探索の旅】吉祥寺の吉祥”寺”はどこにあるのか?

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吉祥寺

毎年、住みたい街ランキングが発表されているのは有名な話だ。ここ数年間、王座には横浜が君臨しているらしいが、吉祥寺も例年上位に食い込んでいる。過去には何度も一位に輝いた。

吉祥寺駅。

吉祥寺の発展した街並みからか、意外に勘違いしている人が多いのだが、実は吉祥寺は東京23区内にはない。吉祥寺は武蔵野市に位置している。かと言っても武蔵野市は東京都の26市部の中で一番東寄り。吉祥寺駅には京王井の頭線とJR中央線が停まる。

渋谷、新宿まで乗り換えることなくアクセスが可能なところも吉祥寺の良さの一つ。大型の商業施設が多数隣接、いつ行っても世代を問わずたくさんの人で賑わっている。徒歩圏内にある井の頭公園は都内屈指の桜の名所だ。

吉祥”寺”

中学時代の教員で「当たり前を疑え」的な発言をしていた方がいたのを覚えている。「当たり前」という認識区分である時点で、外部からの問題提起なり指摘がない限り「疑う」の過程にまず至らないというのが自論だ。(優等生だったので展開した記憶はない)

さて。ここで私からの問題提起なり指摘なのだが、そういえば、吉祥寺とは吉祥”寺”なのである。

幼少期から吉祥寺にはよく連れて行ってもらっていたが、吉祥”寺”を見たことがないし、聞いたことすらない。果たして吉祥”寺”は存在するのだろうか?

吉祥寺駅前

探索編

実際に吉祥寺に出向いてみた。Google先生に相談するのが手短であるが、それではロマンに欠ける。駅北口の方面に寺か神社的な何かがあったような記憶が無いわけでもない。
一昔前、北口の商店街を歩いていた時にそれらしき建造物を見た気がする。とりあえずその場所に向かうことにする。

北口の吉祥寺サンロードを進む。

しばらく商店街を進むと、それらしき光景が現れる。

もう少し進むと発見した。記憶は間違っていなかったようだ。そして何より、神社ではなくお寺であった。

探している吉祥寺はその名の通り「寺」であるから、その条件に近づく。だが残念。何事も一発目から上手くはいかないもので、こちらのお寺は「月窓寺」だそう。読みはそのまま「げっそうじ」でOKらしい。お目当ての吉祥寺ではないようだ。

吉祥寺サンロードに面している。

かといって吉祥寺を探す旅をここで諦める訳にもいかないので、(吉祥寺は定期券外なのだ)もう少し周囲を散策してみる。

とりあえずサンロードをそのまま突き当たるまで歩く。大きめの通りに出るとすぐに二軒目を発見。しかも今回もまた神社ではなくお寺のようだ。

光専寺

ほとんどのお寺が、名前の刻まれたビックサイズの石板を掲げてくれているお陰でネタバレが早めなようだ。写真の通り、こちらは光専寺。読みは「こうせんじ」

またもや吉祥寺を引き当てることはできなかったがヒントを得た。

ファミマで買ったポカリを飲んでいると、目先の旗が風になびいている。

絶対にお寺が四軒あるに違いないと確信。町会の名前のあまりの安直さに笑みをこぼしていると、四軒寺の案内地図を発見。

世の中の地図というのは残念ながら、目的地の名前が書いているものらしい。この時点で残る二軒も吉祥寺ではないことが判明してしまったが、すぐ近くにあるようなので向かってみることにする。

ということで三軒目は「蓮乗寺」読みは「れんじょうじ」厄年の不幸から守ってくれるらしい。

そして最後の四軒目が「安養寺」読みは「あんようじ」こちらは梵鐘(かね)が有名だそう。    

結局、吉祥寺の発見には至らなかった。

この日も東京の最高気温は32度。インスピレーションも舞い降りてこなかったので、Google Mapさんのお力を借りることにする。

駒込へ

Google Mapさんのお示しによれば、住所が吉祥寺の地区のお寺は全て「吉祥寺」ではないことが判明。

お手上げなのでGoogle先生に相談してみたところ、文京区駒込に吉祥寺があるとの情報を発見。調べていくうちに、私とおんなじことをしている同士たちが結構いるようだ。世界は広いね。


ということで駅に引き返し、中央線、山手線を乗り継いで駒込駅へ。駒込駅を出て本郷通りをしばらく南下すれば進行方向左側に、いよいよ吉祥寺の登場だ。駒込の吉祥寺もまた武蔵野のお寺と同様に石板がかなりのサイズ。暑い中探し歩いていたものの名前がどでかく刻まれている。なんだか喜ばしい。

駒込の吉祥寺 

ついにお目当ての吉祥”寺”を見つけることができたが、果たしてこの駒込の吉祥寺は武蔵野の吉祥寺と何の関係があるのだろうか?

駒込に吉祥寺がある理由

結論からお伝えすると、この駒込の吉祥寺は武蔵野の吉祥寺と大いに関係がある。武蔵野の吉祥寺のルーツはこの駒込の吉祥寺にある。

ではその関係性についてだが、簡単に言えば “ノスタルジア”である。故郷を懐かしみ愛する気持ちだ。

駒込の吉祥寺の本堂。

門前町という言葉はご存知だろうか?神社や寺の周囲に拡がるように形成された町のことである。
東京では浅草をイメージしていただければ分かりやすいと思う。

かつて、この駒込にある吉祥寺は現在の水道橋付近にあったという。現在の駒込の吉祥寺は水道橋から移転してきたものなのだ。水道橋付近に吉祥寺があった頃、吉祥寺には立派な門前町が拡がっていたそうだ。

しかしそこに悲劇が舞い降りる。火災である。この火事は明暦の大火と呼ばれている。この火事、相当にビックな火事だったようで、世界三代大火の一つとも言われている。少なくとも3万人がこの火事で亡くなったそう。江戸城もほとんど焼失してしてしまったが、この火事を機に防災という概念が日本で浸透した。

出典:Wikipediaより。
「明暦の大火を描いた田代幸春画『江戸火事図巻』」https://ja.wikipedia.org/wiki/明暦の大火



この火事の影響で水道橋の吉祥寺の門前町は焼失。住処を失った門前町の人々は江戸幕府から示しを受けて現在の武蔵野へ移り住むことになる。

門前町の住人たちは吉祥”寺”への愛情を込めて移り住んだその地を吉祥寺と名付けた。これが吉祥寺誕生の秘話である。

吉祥寺へ

結局、門前町だけでなく吉祥寺そのものも移転を余儀なくされる。(ここには諸説ある。明暦の大火とはまた別の火事により吉祥寺が移転したという説、戦争が原因という説…)

そして水道橋にあった吉祥寺は移転した。

後々、関東大震災や戦争をきっかけに武蔵野に移り住む人は急増。次第に街は発達し、現在の吉祥寺に近づいていったということになる。

吉祥寺駅南口の様子。

おまけ

武蔵野の吉祥寺にて吉祥”寺”を探していた際、井の頭公園にある井の頭弁財天・大盛寺と、武蔵野八幡宮にも足を運んだのでついでに。

井の頭弁財天

東京とは思えない景色である。京都と教えられたら信じてしまう。井の頭公園のボートは、カップルで乗ると必ず別れると昔母が言っていた。行動経済学視点で都市伝説を分析するというシリーズで、その理由を分析している面白い記事があったのでぜひ。

なぜ恋人たちは井の頭公園のボートで別れるか | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン)
みなさんは、こんな話を聞いたことがありませんか? 吉祥寺にある井の頭公園でデートをしてカップルでボートに乗るとその後、その二人は別れることになるというお話です。実を言うと、この都市伝説は全国にありま…

武蔵野八幡宮

八幡宮とはお寺ではなく神社である。即ち、仏教ではなく神道である。

おわりに

吉祥寺を探す旅の途中に気づいたことだが、吉祥寺はやはり寺院や神社が多い町の一つのようだ。
結果として、吉祥寺に吉祥”寺”はないという結論に至ったが、江戸時代に水道橋から吉祥寺に移り住んだ人々の寺院を大切にする想いが街並みとして現れているのかもしれない。

無論、2021年の吉祥寺を生きる人の中に吉祥寺誕生秘話を既知とする人は、恐らくほぼいないだろうが、それが”時代”というもので、仕方のないことだ。23歳の時にあの曲を創った中島みゆきには、いつになっても頭が上がらない。

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