渋谷から18分の安らぎの地。
東急東横線と大井町線で渋谷から18分。運賃199円でどうやら「安らぎ」を手に入れられるらしい。そんな安らぎを提供してくれるのは東急大井町線の「等々力駅」から徒歩2分程度の「等々力渓谷」だ。等々力渓谷には東京都世田谷区とは思えない大自然が広がっている。かといって渓谷から出れば景色は一変。渓谷の周りには閑静な住宅街が広がっていた。まさに、等々力渓谷は東京の「異空間」的スポットである。何かとストレスを感じることの多いこのご時世。渋谷から199円で「癒し」が買えるのなら安いものではないだろうか。
階段を降りれば広がる異空間。

等々力駅の改札を出て左手に進むと、少し大きな通りに出る。道なりに進むと進行方向右手に大きなケヤキの木が現れる。このケヤキは世田谷区の名木百選にも選ばれたちょっと有名な木なんだとか。ケヤキのあるところで右折すればすぐに渓谷へ降りる階段が見つかる。

異空間へ導くスカーレットの橋。
渓谷に続く階段を降りるとスカーレット色の橋が架かっている。この橋は「ゴルフ橋」と呼ばれている。過去、この近辺に大きなゴルフ場があったことが由来だそうだ。ゴルフ場は1940年頃に廃止され、空襲により姿を消してしまったらしい。跡地には「玉川野毛町公園」が作られ、都営住宅も建てられた。鮮やかなスカーレット色のゴルフ橋は異空間と周りを繋ぐゲート的存在のように思える。


ゴルフ橋をくぐったあたりから空気感が一変する。体感温度も数度下がったように感じた。周囲は緑の木々に囲まれ、渓谷を流れる川はエメラルドグリーンに輝いている。美しく輝くこの川は「谷沢川」と呼ばれる。等々力渓谷に沿って流れ、渓谷を抜けた後に多摩川に合流している。
稲荷堂と不動の滝。
渓谷沿いをしばらく歩くと、反対側の岸になにか建物が見えてくる。建物の正体は稲荷堂。「利剣の橋」を渡って向こう岸に行ってみると、稲荷堂の右手には滝も流れている。この滝は「不動の滝」。「等々力」という地名、「とどろき」と読むわけだが、この「不動の滝」の音が周囲に「轟いた」ことが地名の由来とされているそうだ。現在は滝の水脈は細く「轟く」という印象ではなかったが、岩の断面から流れ出る光景は迫力がある。



稲荷堂側の岸には等々力不動尊がある。不動尊とは不動明王のこと。等々力不動尊の仏様はよく見ると怒ったような顔をしている。不動尊は現世にご利益をもたらすと言われているが、怒ったような険しい顔はイメージとは合わない気がする。実は、煩悩を抱える民衆を力ずくで助けるために険しい顔になってしまっているらしい。当時からギャップ萌えは存在したのかもしれない。
等々力不動尊へ。
不動の滝のさらに右手に、渓谷の上側につながる階段がある。階段は等々力不動尊に繋がっている。


渓谷のすぐ裏手にあるという面白いロケーションからも、非日常を感じることができる。等々力不動尊には、学業成就、金運、健康長寿、厄除け、無病息災などのご利益があるそうだ。大自然に囲まれる等々力不動尊では、春には桜が、夏には新緑、秋には紅葉を満喫することができるそうだ。
おわりに。
新型コロナウイルスの流行をきっかけにリモートワークが主流になりつつある。場所に囚われないワークスタイルにより、地方への移住を考える人もちらほら見かける。私個人としては都会的な暮らしが好きだし、それがスタンダードになりつつある。そんな暮らしの中での「たまに」の自然的な「癒し」は非日常で刺激的だ。「たまに」の自然的な癒しを求めるタイプの人間は一定数いるように感じる。等々力渓谷は我々の求める条件を完璧に満たしている。自粛生活をきっかけに「たまに」の「癒し」の大切さを実感した人は少なくはないはずだ。
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